万葉の古都奈良

平成の世もあと数日となり、いよいよ新しい時代令和になります。この令和という元号は、万葉集から引用されたと発表されています。万葉集とは、奈良時代末期に成立した日本最古の和歌集です。和歌の原点である万葉集は、時代を超えて読み継がれながら後世の作品にも影響を与えている、非常に重要な史料であると言われています。

新元号『令和』は万葉集「巻五」 梅花の歌 三十二首の序文『初春の令月(れいげつ)にして 気淑(きよ)く 風 和(やわら)ぎ 梅は鏡前(きょうぜん)の粉(こ) を披(ひら)き 蘭は珮後(はいご)の 香を薫(かお)らす』 から引用されたもので、初めて日本の古典(国書)から選定されました。奈良には万葉集所縁の地が其処彼処にあり、万葉歌碑も彼方此方に建てられています。それではいくつかご紹介します。

所在地 登大路町/奈良県庁東交差点北東

『見渡せば春日の野辺に霞み立ち 咲きにほへるは桜花かも』 万葉集 巻十 1872 作者未詳

『遠くを見渡すと、春日の山裾の野辺一帯に霞が立ち込めて、その中に美しく照り映えて咲いている花、何と美しい、あれは桜花であろう』この桜花はいまのソメイヨシノではなく、山桜です。この歌碑は4月にオープンした奈良公園バスターミナルの東側、奈良県庁東交差点の北東に建てられています。この辺りは雲井坂と呼ばれた場所で名所奈良八景の一つに数えられています。(奈良八景とは ・・・*東大寺の鐘 *南円堂の藤 *佐保川の蛍 *猿沢池の月 *春日野の鹿 *三笠山の雪 *雲井坂の雨 *轟橋の行人)

所在地 東大寺 真言院境内

『すめろきの御代栄笑むと 東なる みちのく山に金花さく』 万葉集 巻十八 4097 大伴家持

『わが大君の御代がますます栄えるであろうと、はるか東の陸奥の国の山に黄金の花が咲いたよ』と詠み解くそうです。これは聖武天皇が東大寺の盧遮那大仏の鋳造を発願されたおり、その塗金に必要な金を遠く陸奥の国(福島県、宮城県、岩手県、青森県)より献上された この天皇の世はますます栄えるであろうとの喜びを家持は詠っています。

所在地 手向山八幡宮境内

『秋萩の散りまがひに呼び立てて 鳴くなる鹿の聲の遥けさ』 万葉集 巻八 1550 湯原王

『秋の広々とした野、今しきりに萩が散り乱れています。折しも遠く妻を呼ぶ鹿の鳴き声が遥かかなたから聞こえてきますよ』湯原王は、志貴皇子(父は天智天皇)の子で、王族の一人として歌を楽しみながら平城の世を風雅に生きた人物です。

今回ご紹介した三つの謳は奈良公園近くにあるものばかりです。まだまだ沢山の万葉歌碑があちこちに建立されていますので、この良い季節に万葉歌碑巡りをされてみては如何でしょうか。

参考 : Wikipedia. 奈良市広報 万葉ゆかりの地をたずねて 〜万葉歌碑めぐり〜